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なぜ遺言は必要なの?

「相続をきっかけに身内同士が財産を奪い合う・・・」こんな話は枚挙に暇がありません。日本はかつてない超・少子高齢社会が到来し、右肩上がりの経済成長も期待できない現代社会の状況がその背景となっています。加えて、核家族化、ひいては家族同士ですら孤立する、超・個人主義の時代が既に到来していることも一因になっていると考えられます。つまり、かつて一般的だった、「三世代が同居し、親の遺産は長男が引き継ぐもの。」という暗黙の常識が通用しなくなっているのです。家族のあり方も多様化し、結婚しない、あるいは結婚しても子どもを持たない夫婦の増加、離婚する夫婦の増加など、家族関係もまずます多様化、複雑化しているのです。

このような状況下で、一旦相続が発生すれば、「揉めないほうがおかしい。」といっても過言ではありません。
そんな
相続問題を未然に防ぐ切り札になるのが、「遺言書」なのです。自分自身が責任を持って「きちんとした遺言書」を作成することで、自分の財産を巡るトラブルを予防することができるのです。

遺言書を作成するメリットとしては2つあります

①遺産分割協議を経ずに相続手続きが完了できる

②面倒な相続手続の負担を大幅に軽減し、円滑な遺産の名義変更が可能

遺産分割協議を経ずに相続手続が完了できる

 遺言書を作成しておくことの最大のメリットは、相続時に問題になる「遺産分割協議」を経ずに、相続手続が完了できることです。相続で揉める最大の原因は、この「遺産分割協議」が相続人全員の合意によってのみ成立するものであるため、これがなかなかまとまらないことが挙げられます。
遺産の名義変更には、この「遺産分割協議」が成立したことを証する「遺産分割協議書」が必要で、しかも「遺産分割協議書」には相続人全員の署名と実印での捺印、そして相続人全員の印鑑証明書が添付されていなければならず、これを作成すること自体大変な手間がかかります。
  結局のところ、この「遺産分割協議」がなかなかまとまらず、相続トラブルに発展してしまうわけです。
また、いわゆる普通のご家庭であっても、相続トラブルが急増している実態があります。

普通の家族でも揉めてしまうケース

①主な遺産が不動産のとき

②両親ともども他界したあとの2次相続のとき

③親より先に子が亡くなったとき

④相続人間で介護負担に大きな偏りがあるとき

 上記のようなケースは、特に「遺産分割協議」がまとまらないケースが多く、相続が紛争に発展する危険性が高いといえます。これらは、普通のご家庭でも多くの方があてはまるのですが、つまり、ごく普通のご家庭でも、相続トラブルに発展してしまうことが日常茶飯事であることを心得ていただきたいと思います。

一方、遺言書があれば、その遺言者の所有する財産の行き先はその遺言書に記載されているとおりになり、「遺産分割協議」をしなくても遺産の名義変更が可能になり、無用な相続争いを未然に防ぐことにつながります。もちろん、家族の状況や、人間関係を踏まえた、きちんとした「遺言書」を作成しておくことが円満相続のためには不可欠です。

きちんとした「遺言書」でなければ意味がない

 とはいえ、ただ単に遺言書を作成すればいいのかというとそうではありません。遺言書の大きなメリットを実現する為には、どうしても「きちんとした遺言書」を作成することが必要になります。
  具体的には、自分の財産全般に対して効力のある遺言でなければいけませんし、また相続人の本来有する相続権や遺留分、あるいはその感情の部分にまで配慮した分割内容を工夫しなければなりません。中途半端に遺言書を作成してしまったがために、かえってそれが元で親族同士揉めたらそれこそ本末転倒なのです。
「きちんとした遺言書」の作成の前に行うべきことは次の3点です。

①自分の相続人とその相続割合を正確に把握する

②自分の現在持っている財産内容を整理する

③相続人の有する遺留分を把握する

④今後の自分と家族の状況を予測する

 上記のことを明らかにしはじめて、真に公平な「きちんとした遺言書」を作成することが可能となるのです。遺言書の作成には、専門的な知識とその後の相続手続が円滑に行われることまで踏まえた遺言内容にしておかなければ全く意味がなく、結局のところ、円満相続につながらないことに注意が必要です。
一方で、「きちんとした遺言」を作成しておくことで、本来相続手続で必要となる膨大な数の戸籍謄本の収集や、相続人全員による遺産分割協議書の作成、さらには相続人全員の印鑑証明書の収集といった非常に大変な相続手続の作業をことごとく省略でき、非常にスムーズに遺産名義変更等の相続手続が完了できることも遺言を作成しておくことの大きなメリットです。