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 「相続手続き」とは、相続が開始してから、相続財産の権利が実際に確定し、遺産の名義をしかるべき相続人に変更するまでに必要となる一連の手続きのことをさします。

相続手続きは、それぞれ進めるべき順序があり、また、遺言のある場合とない場合とでその手続きのやり方も多少異なってきます。

基本的には相続手続きの流れとして次の4点を経て手続きを進めていくことになります

相続人を調査・確定する

相続財産を調査・確定する

 

遺産分割協議をする

遺産名義変更をする

相続人を調査・確定する

相続できる人は誰?

 相続手続きに入る前提として、誰に相続する権利が発生するのか知っておく必要があります。相続できる人は遺言のある場合を除き、民法で定められています。結論としては次のとおりです。

配偶者 ⇒常に相続人

子(第一順位)

⇒配偶者と共に相続人
直系尊属(第二順位) ⇒子がいないときのみ相続人
兄弟姉妹(第三順位) ⇒子もしくは直系尊属がいないときのみ相続人

 戸籍上配偶者は常に相続人になります。ただし、内縁関係にあった方や離婚された方には、相続権は発生しない点に注意が必要です。

 次に、故人にこどもがいる場合には、その子も相続人になります。子は第一順位の相続人です。実子であっても養子であっても、相続権に差はありません。養子は、実親と養親の両方の相続人になることができます。ただし、家庭裁判所の特別養子縁組によった場合には、実親の相続人にはなれません。

 故人にこどもがいない場合、直系尊属(故人の父母)が相続人になります。直系尊属は第2順位の相続人となります。

 さらに、子も直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が第3順位の相続人として、相続権があります。

①故人に子がいる場合(第1順位)

配偶者1/2と子が1/2とで相続することになります。

子が複数人いる場合、与えられた1/2をさらに子の数で均等に分配します。

実子も養子も差はありません。

また、配偶者が離婚や死別などで存在しない場合、あるいは内縁の妻である場合は、子が全部を相続することになります。

ちなみに、故人からみて未婚の相手との子は、非摘出子といい、法定相続分は、夫婦間の子(摘出子)の半分のされていましたが、平成25年の法改正により摘出子の相続分と同等となりました。

②故人に子がおらず、父母(または祖父母)がいる場合(第2順位)

 故人に子がいない場合や子が全員相続放棄をするなどした場合、相続権は直系尊属(父母ないし祖父母)に移ります。法定相続分としては、配偶者が2/3、直系尊属全員で1/3です。配偶者がいなければ、直系尊属で全部を相続することになります。ちなみに、父母が両方とも先に死亡していて、祖父母が健在の場合のみ祖父母に相続権が行きますので、注意が必要です。

③故人に子がおらず、かつ直系尊属が既に死亡している場合       兄弟姉妹の相続(第3順位)

 故人に子と直系尊属がいない場合、あるいは、いても全員相続放棄した場合は、故人の兄弟姉妹が相続人になります。その場合の法定相続分は、配偶者3/4、兄弟姉妹全員で1/4です。配偶者がいない場合には、兄弟姉妹で全部を相続します。

 

代襲相続という制度がある

 相続人が子もしくは兄弟姉妹となるはずであるのに、既に死亡している場合などに、その者の子が代わりに相続人となることを「代襲相続」といいます。代襲相続権を有すべき子が先に死亡していた場合には「再代襲相続」としてさらに孫の代まで相続権は及びます。ただし、兄弟姉妹の孫には「再代襲相続権」はありません。

 代襲相続には、このほか相続人が相続欠格者である場合と、相続人廃除となった場合にも該当します。

 相続放棄の場合は、代襲相続にならない点にも注意が必要です。

 

相続人をどう捜す?

 相続人を確定するには、被相続人の出生から死亡までの除籍謄本、改製原戸籍、戸籍謄本などを手に入れ、これをよみこなす作業が不可欠になります。そもそも、分りきっている家族関係、相続人関係について、なぜわざわざ膨大な戸籍を集める必要があるのか疑問に思われる方がいるかもしれません。しかしながら、実際に故人の親族関係がどのようなものであるかということは、やはり客観的な証拠に基づいて証明する必要があります。遺産相続という重要な権利義務関係を左右する事項であればなおさらです。
  戸籍に基づいた調査をしないと、思わぬ相続人を見落としたりして、後々、遺産分割のやり直しを迫られたりすることは意外と多いのが実情です。例えば、戸籍をどんどん遡って調査した結果、家族の知りえない故人の子どもが戸籍上存在しているということは意外と多いものです。あるいは、その者が故人より先に死亡していたりすると、その者の子どもについても現在の状況がわかるまで戸籍を追っていく必要があります。
  このように、事情によっては相続人を確定するのに地道な作業を繰り返す必要があり、慣れていないと思わぬ足止めを喰う可能性もあります。親族関係がやや複雑な場合については、
行政書士や司法書士等の専門家に最初から依頼してしまうことが賢明ともいえます。

相続財産を調査・確定する

 相続人が確定したら次にしなければならないことは、「財産の確定」です。相続財産を計算するためには、土地や家屋などの不動産、現預金、株式などの有価証券、貸付金、(被相続人が個人事業主なら)事業にかかわる売掛金、などといった「プラスの財産」から、住宅ローンやその他の借入金、固定資産税の未払い分などといった債務、すなわち、「マイナスの財産」まで、漏れのないように調べなければなりません。これらの財産調査を行なった結果を「相続財産目録」として作成し、次のステップである遺産分割協議を行なうにあたっての重要な基本資料として活用することになります。

不動産の確定
  相続財産の中でも一般的に大きな比重を占める不動産(土地・建物など)についてみていきます。
不動産を確定(把握)するために、効率のよい方法は、次のとおりです。

市役所で故人の名寄帳を取り、それをもとに、被相続人名義の固定資産評価証明

  を交付してもらう。(相続が開始した日の属する年度のもの。)

法務局に行って、1.で取得した証明書に記載されている不動産について登記簿謄本

 (全部事項証明書)を請求する。

同じく法務局で、固定資産評価証明書に記載されている所在地の土地の公図を請求

    する。

できれば、住宅地図などで、公図上の土地が住宅地図上でどこに位置するのか、

  マーカーなどでわかるようにしておく。

その土地や家屋が他人に貸しているものである場合には、その賃貸契約書(相続開

     始日を含む期間についてのもの)を探し出しておく。

不動産の評価額については、実勢価格評価、路線価評価、固定資産評価等、ありますが、まずは固定資産評価証明書に基づく価格を評価額して相続財産目録に記載することが、最も簡便なため、現実によく行なわれています。
  また、上記のうち③~⑤については、遺産名義変更とは直接関係がないとも言えますが、相続税の申告に際して、土地の評価を正確に行う為に不可欠なものですので、できる限りこの段階で行なっておくことをお勧めします。


預貯金・借入金の確定
  現金預金、借入金などは、預貯金の通帳や当該金融機関に発行してもらう残高証明書で確認します。残高証明書は、相続開始日現在の日付で請求します。
  残高証明書には、預貯金のみならず、借入金の残高も載っているはずですから、被相続人に借金があったかどうかの確認は、これにより可能となります。


有価証券、自動車、その他の動産類
  株式については、株券の確認と、保管先の証券会社に照会します。最近増えている「株券不発行会社」については、株式発行元の株式会社から、株主名簿記載事項証明書を発行してもらうようにします。上場株式については、株式取引価格が公開されていますから、それに基づき株式の評価額を相続財産目録に記載します。
  自動車については、車検証を、貴金属や宝石などの動産については、その目録を準備します。また、中古車販売店で、下取り価格を査定してもらうなどして、相続財産目録に評価額を記載します。

 

遺産分割協議をする

 遺言書がない場合。民法は法定相続人とその相続割合について定めています。しかし、これは目安としての分数的割合に過ぎず、具体的な財産を誰が相続するかは、相続人全員による「遺産分割協議」で決定すると定めており、法定相続分と異なる遺産相続を実現するには、遺産分割協議及び遺産分割協議書の作成が不可欠です。他にも次のような理由により協議書が必要となります。

 

<遺産分割協議書の作成理由>

協議の成立を証明し、後日の紛争を防止する目的

登記手続きの登記原因証明情報として必要

銀行預金を相続した場合の払戻しに必要

相続税の申告に必要

遺産分割協議の前に注意すべきこと
  遺産分割協議に入るためには、その前段階で、相続人調査・確定、相続財産の調査・確定を済ませておくことが必要になります。遺産分割協議は相続人全員が協議に参加し、合意することが必要なため、相続人を一人でも欠いた協議は無効になってしまいます。また、相続財産の調査を行い、相続財産の範囲と評価額を明確にしておくことが、遺産分割協議に入るための大前提となります。もし相続人の中に次のような方がいる場合は、実際の協議の前に手続きが必要となりますので要注意です。

未成年の子どもとその親が同時に相続人となる場合
  相続人として未成年の子とその親権者がいる場合、両者は遺産分割において利害が対立することになります。そこで、このような場合には、必ず、その未成年の子の特別代理人を選任することが必要になります。特別代理人の選任手続きは、親族などの中で適任者を特別代理人候補者に推薦したうえで、子の住所地を管轄する家庭裁判所に選任の申立てを行い、家庭裁判所が特別代理人の選任審判を行うことになります。

 

<特別代理人専任申立てについて>

申立人 親権者、利害関係人
申立先 未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所
申立の必要書類

・申立書(別添参照)

・申立人(親権者)及び未成年者の戸籍謄本

・特別代理人候補者の住民票及び戸籍謄本

・被相続人の遺産を明らかにする資料
(不動産登記簿謄本及び固定資産評価証明書、預金残高証明書)

・利益相反に関する資料(遺産分割協議書案 等)

・特別代理人候補者の承諾書

・※事案により上記以外の資料賀必要な場合あり

申立費用 収入印紙800円+切手代

相続人の中に認知症の方がいる場合
  次に、相続人の中で認知症の家族がいる場合です、認知症の相続人がいる場合には、遺産分割協議の前に、成年後見人選任の申立をするなどして、認知症の方の代理人となる後見人等を選任することが必要になります。遺産分割協議という重要な財産に関する決め事に、認知症の方を含めて行うのは、どうしても不公平な内容の遺産分割になってしまう恐れがあるためです。このように認知症などで判断能力が乏しいのにも関わらず後見人等を選任せずに行った遺産分割協議は、無効になったり取消しの対象になったりしますので注意が必要です。

 

<成年後見人選任申立手続き>

申立人

本人、配偶者、四親等内の親族、検察官等、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人、市町村長

申立先 原則として本人の住所地を管轄する家庭裁判所
申立の必要書類

・申立書

・財産目録

・特別代理人候補者の住民票及び戸籍謄本

・親族関係説明図(※1)

・推定相続人の同意書

・医師の診断書及び診断書附票

・申立人及び本人の戸籍謄本

・本人及び後見人候補者の住民票または戸籍の附票

・本人及び後見人候補者の登記されていないことの証明書

・後見人候補者の身分証明書

・療育手帳のコピー(※2)

・遺産目録(遺産分割を前提に後見人選任をする場合)

申立費用 申立手数料800円        登記手数料 4,000円
予備郵券 2,800円
鑑定費用 5~10万円(鑑定する医師の指定する金額)

※1 推定相続人の分かる範囲のもの。根拠となる戸籍謄本も添付。

※2精神障碍者保健福祉手帳、介護保険証のコピー等を求められることがある

 

行方不明の相続人がいる場合
  遺産分割協議に際して、相続人の中に行方不明の方がいる場合も、手続きが必要になります。まず家庭裁判所に不在者の財産管理人の選任を申立て、財産管理人を選任します。さらにこの財産管理人が、不在者の代わりに遺産分割協議に参加することで遺産を分割することができます。ただ、遺産分割協議の内容につき、「権限外行為許可の申立」を行い、この許可を得てはじめて遺産分割協議が有効に成立することになります。
  また、不在者の生死も不明で、7年以上の期間が経過している場合には、失踪宣告を家庭裁判所に申立てる方法があります。この場合、家庭裁判所の失踪宣告の審判により、失踪期間の7年経過時において、死亡したものとみなされますので、相続人から除外されることになります。ただこの方法は、相続人の順位に変動が生じたり、代襲相続が発生したりする可能性もあり、問題を複雑にするケースがありますので、注意が必要です。

 

<不在者相続人に対する財産管理人選任申立手続き>

申立人

利害関係人(不在者の相続人、債権者など)または検察官

申立先 不在者の従来の住所地の家庭裁判所
申立の必要書類

・申立書

・不在者の戸籍謄本及び戸籍の附票

・財産管理人候補者の住民票または戸籍の附票

・不在の事実を証する資料

・不在者の財産資料(相続手続の場合は、相続財産に関する資料)
(不動産登記簿謄本及び固定資産評価証明書、預金残高証明書)

・申立人の利害関係を証する資料(相続関係説明図及び根拠となる戸籍謄本類)

・※事案により上記以外の資料が必要な場合あり

申立費用 収入印紙 800円+切手代

遺産分割協議の流れ
① 相続人全員の出席のもとで協議を行う
  相続人全員の出席のもと、誰が、何を相続するのかを決めていきます。民法は、相続人の年齢、職業、心身状態、生活状況その他一切の事情を考慮してこれを定める旨の抽象的な基準の規定があるのみです(民法906条)。
  相続人の一部の者のみで行った協議は無効になりますので、注意が必要です。
  ただし、相続人全員が一堂に会することが不可能な場合、書面の持ち回りによる遺産分割協議も判例により認められています。


② 参加者全員が合意に達したら、遺産分割協議書を作成する
  「遺産分割協議書」には、決まった様式はありませんが、誰が何を相続するのかがはっきりわかるように記載し、
相続人全員が署名・実印を押印して印鑑証明書を添付します。さもないと、その後の名義変更手続きなどで、思わぬ足止めを喰うことになりますので注意が必要です。

 

遺産分割方法にもいろいろある

遺産分割協議にもいろいろなやり方があります。具体的にどういう方法で遺産分割をすればよいのか見ていきましょう。

① 現物分割
  「遺産分割の原則的な分割方法で、ある土地・建物は妻に、預金は長男になどと、具体的に決めていく方法です。


  「しかし、分数割合どおりに上手く具体的な遺産割り当てを行うのは、ことのほか大変です。例えば、主な財産がマイホームのみ、というケースは多くありますが、このような場合、家を現実に分割することはまず不可能です。
そういった場合は、
換価分割や、代償分割という方法があり、実際に多く用いられている分割方法です。

② 代償分割
  1人または一部の相続人がその不動産を相続する代わりに、自腹でその部分の代償となる金銭を他の相続人に支払う方法です。
ただし、この方法の場合、代償金を支払う人が現金などを持っている必要があり、現実的には困難を強いる場合もありえます。銀行から借り入れをして代償金を支払ったという例もあるくらいです。

③ 換価分割
  不動産はじめ、相続財産を売却して、売却金を相続人で分配する、という方法です。この方法ですと、各相続人に十分な手持ち現金が無くとも、売却金の分配ができるのがメリットです。
  ただ、不動産の売却ですと、例えば実家を失うことになったり、不動産の売却益に対して、譲渡所得税が課税されたり、あるいは、買い手がつかず長期間売れなかったり等のデメリットもあります。

 

「現物分割」「換価分割」「代償分割」の比較

  現物分割 代償分割 換価分割 共有分割
方法 個々の財産をそのまま相続人に分配する 一部の相続人に財産を与え、他の相続人に対し金銭支払う債務を負わせる 財産を売却などして金銭に換えて各相続人に分配する 数人の相続人で持ち分を定めて共有する

 

長所

わかりやすさ
財産現物を残せる
公平な遺産分割が可能
財産現物を残せる
公平な遺産分割が可能 公平な遺産分割が可能
財産現物を残せる

 

 

 

短所

相続分どおりに分配することが難しい 債務を負担する相続人に支払能力がないと不可能 売却の手間と費用がかかる
財産現物が残らない
譲渡益に対し所得税及び住民税がかかる
利用や処分の自由度が低い
共有者に次の相続が起こると権利関係が複雑化する

特別受益と寄与分を考慮に入れて協議をする
  相続人の中で、結婚資金や事業資金などの名目で、生前に被相続人から贈与を受けていた者がいる場合、「特別受益者」として、その者の相続額が差し引かれます。
  また、相続人の中で、被相続人の介護をするなど、特別の貢献をした者がいた場合、「寄与分」として、その者の相続額を増加させることができます。

 

「特別受益」とは

  故人より生前贈与を受けている相続人と、生前贈与を受けていない相続人とが全く同じ相続分だとすれば、不公平に思う人もいるでしょう。そこで、生前贈与を受けている相続人は、「特別受益」として相続分から差し引かれることがあります。

 

特別受益になる贈与は、次のようなものです。

 婚姻や養子縁組のための贈与

   新居の費用や結納金、新婚旅行費用などです。

 生計資本としての贈与

   大学の学費、住宅取得費用、事業資金などです。

遺贈(遺言によって受ける贈与のこと)

   遺贈であればすべて特別受益となります。

また、生前に多くの特別受益を受けている相続人によっては、計算の結果今回の取得分がマイナス(つまりもらいすぎ)、になることもあります。その場合でも、原則として、もらいすぎの部分は返還しなくてもよいことになっています。

「寄与分」とは
  生前の故人との関わりは、人それぞれです。故人の生前に故人の財産維持や財産増加に対し貢献した相続人は、故人に寄与したということで
「寄与分」が認められることもあります。故人の事業や農業を継続して手伝っていた相続人や、故人を長年看護した相続人、故人に財産を贈与した相続人などがこれにあてはまります。但し、単なる家事労働だけでは、寄与分として認められないとされています。
  寄与分は遺産分割の対象となる相続財産には含まれず、寄与した相続人は相続財産からまず寄与分を取得して、残った部分を法定相続分で分けるということになります。

  具体的に寄与分がいくらになるのかということは、誰が決めるのでしょうか。実際に寄与がどれくらいあったのか、ということは亡くなった本人にしかわからないことが多く、他の相続人から見れば、寄与分とは思えない部分もあるでしょう。そのようなことも考慮して、
寄与分がどのくらいになるのかということは、相続人全員の協議により決めることになっています。
  ただ、存命中の故人との関わりや思い入れはそれぞれ個人によって異なり、各自主観的に寄与の度合いを判断するために、寄与分の合意ができないということも多くあります。何度話合っても一向に協議が成立しない場合には、最終的には家庭裁判所へ寄与分を定める審判を申立て、その席にて決着をつけることになります。


遺産分割協議を上手に進めるポイント
 ① 遺産分割は相続人の妥協も必要です
  遺産分割が法定相続分どおりにきっちり分けられるケースはむしろ少ないです。不動産やその他の動産など分けられないものほど価値の高い遺産だったりする為です。だからといって、
自分の相続権に固執するあまり大事な親族のきずなまで失うことになっては目も当てられません。所詮、相続で得る財産など棚からボタモチ、なかったも同然なのですから、ここは相続人同士の譲り合いの精神で、遺産分割協議に臨むよう、肝に銘じていただきたいものです。

 ② 隠し事が災いのもと
  故人と同居、あるいは財産管理を行っていた親族が遺産を隠しているのではないか、という他の親族の疑いの気持ちが遺産分割協議で揉める一つの原因となることがあります。遺産の内容を口頭で説明するのみで終わらせてしまうような行為が、このような疑念を他の相続人に植え付けてしまうのです。 
  たとえ親族同士とはいえ、故人と同居していたあるいは故人の財産を事実上管理する立場にあった相続人は、
他の親族に聞かれる前に財産を証拠書類とともに相続人の前でオープンにするぐらいの気構えをもつことが、円満な遺産分割協議のために重要なポイントです。

遺産名義変更をする

遺産分割協議まで完了すると、次は、遺産の名義変更手続きが待っています。いくら協議がまとまっても、名義変更しないでいると公には自分のものとして認めてもらえません。
  この名義変更手続きは、ことのほか煩雑に感じるものですが、
短期間に集中的に済ませることがポイントです。これらの手続きをスムーズに進めるためにも、不明点は専門家の支援を求めるなどの対策が有効です。
  また、どの手続きにもほぼ共通して必要な書類があります。次の5点です。

 

遺産名義変更前にそろえておくべき必須の「相続手続5点セット」

 当事者全員の印鑑証明書付遺産分割協議書

 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍)謄本

 相続人全員の現在戸籍謄本

 相続人全員の住民票

 その他被相続人と相続人との関係を明らかにする戸籍謄本

この5点セットを数通準備しておくと、手続きがかなりラクになります。
これは原則としての添付書類で、
事情により添付書類が加わることがありますので注意してください。

銀行預金の解約・払戻または名義変更手続

銀行などの金融機関では、預金者の死亡を知った後、原則として相続人全員の署名・押印がなければそれ以降の取引は停止されます。
従って、速やかに必要書類を銀行に提出し、故人名義の預金の解約・払戻しもしくは預金者名義を変更する必要があります。
  銀行により若干の差はありますが、一般的には次のような書類が必要になります。

 

<預金解約・払戻し請求時の必要書類>

 相続手続5点セット

  ・印鑑証明書付遺産分割協議書

  ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本

  ・相続人全員の戸籍謄本

  ・相続人全員の住民票

  ・その他相続関係を明らかにする戸籍謄本

 相続関係説明図

 相続人全員からの委任状

 払戻し請求書(依頼書)

 振込用紙

 被相続人の通帳、預貯金証書、キャッシュカード

 通帳やカード紛失の場合紛失届

株式等の名義変更手続

株式や債権などを取得した場合、名義を自分にしておかないと、配当支払いや企業から発行される各種の通知を受け取ることができません。そこで、株式を実際に預り、保管している機関に対し、相続による名義変更手続きを行うことになります。

① 証券会社での名義変更

  被相続人の株式が証券会社管理になっている場合は、実際に管理している証券会社の支店あてに相続による名義変更を行うことになります。承継人の証券会社取引口座が該当の証券会社にない場合は、相続手続とは別に、必ず承継人本人名義の口座を開設する必要があることに注意が必要です。

 

証券会社における口座名義変更請求時に必要な書類

 相続手続5点セット

 相続関係説明図

 相続依頼書

 口座開設者死亡届書

 相続上場株式等移管依頼書

 相続人全員からの委任状

② 信託銀行での名義変更
  被相続人が単元未満株式を有している場合、信託銀行の特別口座管理になっていることがあります。この単元未満株式を承継人の名義に変更する手続は、証券会社ではなく、株主名簿を直接管理している信託銀行に対し、相続による名義変更手続を行う必要があります。

 

信託銀行における株式名義変更及び口座振替請求に必要な書類

 相続手続5点セット

 相続関係説明図

 相続依頼書

 口座振替申請書または単元未満株式買取請求書

 失念救済請求書及び株主票(相続開始がH21/1/4以前の場合はこちらも必要)

 相続人全員からの委任状

自動車の名義変更

普通自動車の場合、運輸支局で相続による移転登録をすることになります。手数料は1件につき500円となります。すぐに譲渡や廃車をする場合であっても、相続による名義変更を済ませる必要があります。

 

<基本的な流れ>

 必要な資料の収集と作成
   戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明、車検証等の準備

    ↓

 車庫証明の申請手続

    ↓

 運輸支局での移転登録手続

車庫証明の申請手続
  車検証に記載された所有者たる被相続人の住所と自動車を承継する相続人の住所が異なる場合は、原則として、車庫証明を添付しないと運輸支局での名義変更が受理されないため、事前に車庫証明が受けられるかどうかを確認する必要があります。また、車庫証明を受けるには、承継人の自宅住所と駐車場との距離が直線距離で2キロ以内であることが必要ですので、注意してください。

 

車庫証明申請の必要書類

 申請書

 保管場所所有者の使用承諾書(駐車場が賃貸借の場合)

 周辺地図(自宅と駐車場との間の位置を明らかにする地図)

 駐車場配置図(駐車場の寸法、前面道路の距離を明らかにした図面)

運輸支局での移転登録手続
  まず自動車ナンバーから、窓口となる管轄運輸支局を確認します。管轄が異なる場合、ナンバー切り替えの為、運輸支局に自動車現物を乗り入れることが必要となります。(出張封印等の例外を除く。)移転登録に必要な添付書類は次のとおり

 

普通自動車の名義変更申請に必要な書類

 相続手続5点セット

 相続関係説明図

 移転登録申請書

 自動車取得税・自動車税申告書

 移転登録手数料納付書

 車検証(原本)

 車庫証明書(被相続人と相続人の住所が異なる場合)

 自動車旧ナンバープレート(運輸支局の管轄が異なる場合)

 譲渡証明書(所有権留保でローン完済されている場合)

 新所有者からの委任状(運輸支局所定の用紙)

不動産の名義変更手続

被相続人の不動産を相続人が引き継ぐ為には、相続を原因とする所有権移転登記の手続きをその不動産の所在地を管轄する法務局に対して行うことになります。
  管轄の法務局に「所有権移転登記」を申請します。遺産分割協議により不動産所有者になった者の名義にします。次のような書類を添付します。

 

不動産登記申請に必要な書類

 相続手続5点セット

  ・印鑑証明書付遺産分割協議書

  ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本

  ・相続人全員の戸籍謄本

  ・相続人全員の住民票

  ・その他相続関係を明らかにする戸籍謄本

 相続関係説明図

 不動産の固定資産評価証明書

 登記申請書

相続を原因とする所有権移転登記の申請は、原則として承継人単独での申請が可能です。また、相続を原因とする所有権移転登記の場合、固定資産評価額の0.4%の登録免許税がかかります。
  登記自体は、義務ではないが、登記をしていないと自分の権利を第三者に主張することができないため、やはり自分の権利を保全するために、速やかに登記をして不動産の所有権を自分名義にしておくことが大切です。
  不動産の名義変更は、相続人本人でも可能ですが、個別の事例で登記申請の内容や必要書類の内容が変わることも多くありますので、登記申請で困ったときは司法書士などの専門家に相談しましょう。

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